倉庫売却・譲渡にかかる所得税と固定資産税の仕組みとは?

倉庫売却や譲渡を考えるときの基礎知識とは

倉庫売却や譲渡を考えるときの基礎知識

倉庫を所有している会社が、倉庫売却や譲り渡しをする場合が考えられます。例えば、経営的に苦しくなった場合などがこれにあたります。会社をたたむ方法もありますが、従業員がたくさん働いている場合には従業員を抱えたまま会社をたたんでしまうと大きな不安を与えると同時に損害を与えてしまいかねません。
それならば、同じような倉庫業者を見つけて譲渡あるいは売却することで借金を減らすことができるようになるでしょう。それだけでなく、事業承継の場面などもこのように相手方に譲り渡す方法や売却する方法がよく利用されています。近年は、少子化の影響で今まで倉庫業を経営していた経営者でも、跡継ぎがいないなどの問題が考えられます。そうするとせっかく作り上げてきた倉庫業なのにすべて0に戻さなくてはいけません。それよりも、ほかの会社に売ってしまったり譲り渡したりした方がメリットがあります。
譲渡や売却をする場合、最近はエムアンドエーがよく利用されています。倉庫を所有している経営者が、相手企業に譲り渡すか売却する場合でも、エムアンドエーを利用すると有利になる可能性があります。エムアンドエーを行う場合には、仲介会社を利用するのが基本になります。
なぜかといえば、仲介会社が買収する会社や譲渡を受ける会社を紹介してくれるからです。そうでなければ、なかなか自力で相手の会社を探すのは難しいといえます。業者にお願いする場合でも、すぐに結果が出る訳ではありません。業種も、似た業者を選ばなければいけないためまずは絞り込みを行うのが基本です。売却や譲渡する側と同じような業者を見つけて、そこで譲渡や買取りをする意思があるかを確認します。もし、登録している会社の中で合併する意思や買取りをする意思があればそこで細かな条件を合わせて売買や譲渡が成立します。ですが、マッチング自体はすぐに決まるわけではなくたいていはいくつかの企業とマッチングを行ってみて、可能な限り良い条件のところを見つけるのが基本になると言えるでしょう。そのため、一つ目の会社がいくらか条件が良かったとしても、ほかの会社などと比べてみてから決めることが重要になります。特に、赤字の状態が続いている場合には少しでも早く結果を出そうとする傾向がありますが、必ずしもそれがよいとは限りません。
売却する場合、相手会社の立場からすれば同じような内容の会社を買収することで、規模を拡大することができます。同じような会社を選ぶメリットは、もらい受ける側の会社からすれば、従業員にも継続して同じような仕事をしてもらうことで業務拡大が瞬時に可能になるわけです。このように考えれば、買い手にとってもエムアンドエーは非常に魅力的なことがわかります。もちろん、売却をする立場も納得いく金額で売却した場合には十分なメリットがあると言えます。特に借金を抱えている場合には早期的に決着をつけるのが一番負担が小さくなるでしょう。
もし、エムアンドアーにより売却や譲り渡した場合には、どれぐらいの費用がかかるかが気になるところです。費用がいくらになるかを知らずに行動に踏み切るよりも、事前にどれぐらいの費用になるかを見積もってもらった方が安心できます。基本的に、仲介業者に支払う費用がどれぐらいになるかといえば、会社の規模によって分かれてくるところです。小さな会社の場合には100万円から300万円程度の仲介手数料を支払えば問題ありません。社員が100人以上で1000人未満の中規模の会社の場合には、500万円から1000万円ぐらいかかることもあります。さらに、社員が1000人を超えるような大きな企業になれば1000万円から1億円ぐらいかかることもあります

倉庫売却には所得税がかかる?

倉庫売却と所得税

土地や建物などの不動産を売却して利益を得た場合には、所得税を支払う必要があります。倉庫も不動産の一つに含まれますが、一般的な住宅とは異なる特殊な物件といえるでしょう。一戸建てやマンション、土地などは買い手が多いので売却しやすいですが、倉庫は買い手が大分限定されてしまいます。そのため一般的な不動産会社では取り扱っていないことも多いので、倉庫や工場などの取り扱いのある不動産会社を選ぶ必要があります。
倉庫売却においても、所得税は支払わなければなりません。倉庫売却によってどのぐらいの利益を得たのかによって支払う税金額は違ってきます。売却した時の金額だけを基準にするのではなく、不動産を購入した際の費用や売却するためにかかった費用などを差し引いて定められている計算式に当てはめて所得税額を算出します。
まず、譲渡所得金額が必要で、売却した金額から取得費や譲渡費用を差し引いた金額になります。取得費は実際に購入した際の費用に修繕費や改築費用を足したものから、減価償却費に相当する金額を差し引いたものです。減価償却費とは、取得費に償却率を掛けた金額になります。建物などの不動産は、時間の経過と共に資産価値は減って行きます。新築の頃と同じ価値がずっと続くわけではありません。年数が経過すればするほど、その資産価値は下がります。その下がった価値を一定年数に分割して経費として計上したものが減価償却費になります。償却率は倉庫の使用目的や構造などによって違いますし、耐用年数によって算出される仕組みになっています。国税庁では償却率表を公表しているので、当てはめて計算する際にはそれを参考にするようにしましょう。
税金を計算するための税率は、不動産を所有している期間によっても違います。5年以内と所有している期間が短い場合には税率が高くなりますし、5年以上の長期になると税率は低くなります。そのため不動産を売却するための目安にもされています。支払う税金を少しでも抑えたい時には、5年以上所有した後に売却するのがいいかもしれません。
それから倉庫売却を行っても、取得した時の価格から大幅に価格が下落していることもあります。一見すると売却したことで利益を得ているように考えられますが、トータルで考えると損失が発生したことになります。つまり、利益は発生していないので所得税もゼロになるのです。また、定められた一定期間の利益と損失を相殺することを損益通算といいます。売却した年だけではなく、翌年以降も適用されるので所得税は安くなります。損益通算が適用されるかは、正確な不動産の情報を持っておくことが大切です。
倉庫は事業用として使われていた場合には、所得税だけではなく消費税の課税対象になります。これは法人が売却する時だけではなく、個人が売却する際も同様なのです。ただし、倉庫が建っている土地は消費税の課税対象とはなりません。建物部分だけが対象となるので、注意するようにしましょう。
倉庫売却の際には、そのまま売却する場合と倉庫を解体して売却する場合があります。倉庫のような建物はそのまま使用することはあまりないかもしれません。そのため倉庫のまま売却したいという時には、事業用の倉庫や工場の売却に詳しい不動産会社に依頼するのがおすすめです。一部の地域だけではなく、幅広いエリアを対象にする必要もあります。更地にした方が用途が限定されないので売却しやすいですが、解体の費用が発生します。大規模な倉庫になると解体費用だけでも高額になることもあるので、倉庫をそのまま使用してくれる売却先を見つけることができれば得られる利益も多くなるでしょう。

倉庫売却時にも考慮すべき固定資産税

倉庫売却時にも考慮すべき固定資産税

倉庫などの建物の他に土地にも固定資産税が発生するため、不動産を有している方は1年に1度の頻度で納税を行いますが、納税を考慮する必要があるのは倉庫売却を行い倉庫を手放す際も例外ではありません。
固定資産税というのは家屋や土地もしくは償却資産といった固定資産を有している方に課せられている納税義務であり、1月1日の段階で課税台帳等に記載されている方が1年に1度納税します。
そのように1年に1度、1月1日の段階で納税するという制度の特性上、1年間の途中段階で倉庫売却などが行われた場合には、既に納付されている状態になっているので、翌年手元納付通知書が届き初めて税の存在を把握するという事例も珍しくありません。
売却に様相が似ている制度として相続が挙げられ相続にも相続税がありますが、相続税の事例では一度限りの処理という事もあり税制上多くの控除額が設定されているものの、倉庫売却における固定資産税に関しては他者に倉庫を譲るといった点では共通していても相続とは関係性が無い1年に1度の課税対象という事もあり、控除という仕組み自体が設けられていません。
また、倉庫売却を行えば倉庫が自身の持ち物ではなくなるのにも関わらず、税を支払う必要がある理由としては、特有の課税サイクルが関係しており、1月1日の段階で所有者として記録されている方に対し全額が課税されるためです。
そのため、1年間の途中段階で滞りなく倉庫の売却手続きが完了しても別々に納税義務が生じたり、購入した側が全てを支払ったり、ということにはなりません。
つまり、倉庫売却を行ったのが翌日の1月2日であっても前日まで倉庫を所有していた方に納税義務が発生する様子になり、税額が小さければ引き続き支払っても構わないという方も居ますが、実際には比較的大きな額になるのが実情です。
既に売却が完了していて自らの所有物ではないのにも関わらず、今後1年間分の固定資産税を支払う必要が生じた時に講じるべき対策は、倉庫を購入して頂いた方に固定資産に関する納税義務に関して説明し一緒に解決を目指していく事です。
お互いにとって円満に解決する最良な方法が日割り計算であり、各々が所有者として過ごしている日数分の税を負担する仕組みなので、売り主と買い主の双方が納得できる解決策です。
こうした日割り計算で解決するためにポイントになるのが、暦年を用いて計算する方法の他に会計年度を用いる方法に分類されている様子で、選択する方法により負担額に差異が生じるため用いる方法に関してもお互いが納得できるよう相談しましょう。
具体的には引渡日が7月1日であった場合、暦年を用いた事例では売り主と買い主が共に半年分を負担する様子になりますが、会計年度は4月1日から開始されるという特性上売り主が3ヶ月間分を負担する一方で買い主は9ヶ月間分を負担する事になります。
双方がきっちりと半分ずつ負担する暦年を用いた方がお互いに納得する結果になりやすいですが、得た倉庫を今後長い年月にわたり所有し使用し続けていく点から、買い主側から負担が大きくなっても構わないと伝えられた際には会計年度を選べば手放した側の負担が軽減できます。
このような分担して固定資産税を納税する事は税法上決められている事ではなく、あくまでも売り主と買い主で穏便に売買が行えるようにするための術なので、トラブルを生じさせないように行う対策の重要性は高いです。
任意のやり取りであるからこそ、未然にトラブルを防ぐべく契約内容をお互いにきっちりと取り決めしておく事が重要ですし、実際の税額は納税通知書を目にするまでわからないので、前年の税額を元にして精算する方法や、書類が届いてから精算するといった方法などについてお互いに共通認識を持っておく事が大切です。