賃貸借契約の基本!敷金・礼金とは

◎敷金と礼金

住居・テナント・倉庫…物件を借りる際に「敷金」・「礼金」という言葉は必ずと言っていいほど目にする言葉だと思います。

どちらも初期費用として支払うものですが、用途や理由、意味を考えることは少ないかと思います。

そこで、この「敷金」と「礼金」について解説しようと思います。

 

〇「敷金」

敷金とは、退去時の原状回復(賃貸中にできた傷等を修復すること)費用や賃料の滞納があった際、その費用や債務を補填するためにあらかじめ支払うお金のことです。

基本的にはこの費用や債務を差し引いたお金が退去時に戻ってきます。

 

2020年4月に行われた民法改正では、この「敷金」についての条文を新設し、下記のように定めています。

 

「賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない」(民法の一部を改正する法律案新旧対照条文 第六百二十二条の二より)

 

要するに、敷金から費用や債務を差し引きした残りの金額は賃借人へ返さなければいけないということです。

また、次の条文には賃貸人は賃借人の債務が発生した場合、敷金からその弁済に充てることができるというようなことが書かれています。ここで注意が必要なことは、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てるよう請求することはできないということです。

つまり、賃借人は家賃を滞納した場合、敷金を払っているからと言って「敷金から引いてくれ」とお願いは出来ません。

 

理由は上記の条文に敷金返還のタイミングを1.「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。」2.「賃借人が適法に賃借権譲り渡したとき。」(民法の一部を改正する法律案新旧対照条文 第六百二十二条の二より)となっているためです。

上記のタイミングにならない限り「敷金」は返還されず、返還請求権が認められないうちは賃借人は賃貸人に「敷金」を委託している立場となります。そのため、「敷金」に対しての権利が賃貸人にある以上、滞納家賃を「敷金」で充当するという請求は賃借人からは出来ません。

 

〇「礼金」

礼金とは、その名の通り「賃借人が賃貸人に御礼として支払うお金」です。

そもそも「礼金」とは住宅が不足していた時代に生まれたそうです。

住宅が不足している状況で、住宅を貸してくれる感謝の気持ちとして「御礼をする」ことから始まったようです。

そのため、「礼金」は一度支払うと返還されません。

 

◎保証金と権利金

このように「敷金」・「礼金」はよく目にしますが、「保証金」や「権利金」などという言葉も存在します。

「保証金」と「敷金」の簡単な違いは関東と関西での使い分けです。

「保証金」は主に関西地方で使われており、「敷金」は主に関東地方で使われていたようです。

この「保証金」は細かい違いはあるものの基本的には「敷金」と同義と考えていただいて結構です。

一番大きな違いとしては、「保証金」には「敷引き」というものがあるということです。

あらかじめ、「保証金」の中から退去時に引かれる金額のことを「敷引き」と言います。

 

「権利金」と「礼金」の違いはその意味です。「礼金」賃借人への御礼のために支払うお金ですが、「権利金」は賃貸建物における対価のために支払うお金ということです。

一度支払うと返還されないお金というところは基本的に同じですが、「権利金」の場合返還請求が可能な場合があります。

その条件は契約期間の定めがあり、その定められた契約期間満了までに退去した場合です。

この「権利金」は契約期間内全体の使用権利に対する対価となる為、契約期間途中で解約した場合、その解約したときから満了までの使用権利に対する対価の返還を求めることができます。実際の判例でも証明されているようです。一方、期間の定めがない契約は、返還が一切認められないという判例があるようです。

 

◎敷引き

「敷引き」とは、「保証金」から解約時に引かれる金額のことを言います。

要するに、入居時に「保証金」を支払い、解約時にこの「保証金」から「敷引き

」の金額を差し引いた分が返還されます。※「保証金」費用や債務も差し引かれます。

元々この「敷引き」は関西地方で「保証金」とセットで使われていました。理由としては、関西では「礼金」という制度がなかったからのようです。

「敷引き」は関東地方の「礼金」の役割を担っていたようです。

現在では、「敷金」に「敷引き」を使用している物件もありまので、一概に土地によって違いがあるとは言いにくいですね。

この「敷引き」ですが、「礼金」とは違う特徴的な面を持つこともあります。それが「スライド式」と呼ばれているものです。

この「スライド式」というものは、物件を賃貸する年数によって変動していくというものです。長く借りれば借りるほど「敷引き」の金額が少なくなっていくと考えていただければと思います。

例えば「5年未満50%・10年未満30%・10年以上無し」というように5年未満で解約する場合、保証金の半分しか返還されませんが、10年以上借りている場合は、滞納などがない場合は全額返還されるということです。

この「スライド式」はテナントや倉庫、事務所等で度々採用されているため、ご注意ください。

 

 

以上のように、賃貸物件の初期費用に関しても様々な単語が出てきます。その単語それぞれを理解すれば、物件を借りる際もスムーズに話がまとまりますので、知っていて損はないでしょう。