2020年民法改正 契約不適合責任について

2020年4月1日に民法が改正されたことをご存じでしょうか?

この民法改正は1896年に制定されて以来、約120年で初の大きな改正です。

実はこの民法改正は不動産に関しても大きく影響を与えました。

その中でも今回は不動産売買に大きく関わってくる「契約不適合責任」についてみていこうと思います。

 

◎民法改正前と改正後

実はこの契約不適合責任というものはこの民法改正の際に創設されたものです。

その代わりに今までの民法から廃止されたものが瑕疵担保責任です。

では、この「瑕疵担保責任」と「契約不適合責任」についてどのような違いがあるのでしょうか?

 

〇瑕疵担保責任

民法改正前の瑕疵担保責任は、売買物件に「隠れた瑕疵」が存在する場合は、売主が瑕疵担保責任を負うものとされていました。

 

その内容は

  • 原則として損害賠償

「隠れた瑕疵」を見つけた場合は原則として損害賠償請求が可能でした。

  • 契約目的が達成されない場合に限り、契約解除

建物使用に関して、その使用目的が達成されない場合に限り契約解除が可能でした。

 

以上の2点でした。いずれの責任の内容も売主に過失があるか無いかにかかわらず発生するものとされていました。

この瑕疵担保責任は売買当事者の不公平を是正するために制定されました。そのため、売主の過失が問われることはありませんでした。

また、瑕疵担保責任では、買主が隠れた瑕疵の事実を知った時から1年以内に損害賠償請求や契約解除といった権利の施行が求められていました。

〇契約不適合責任

前項の瑕疵担保責任が廃止され、新たに制定されたものが契約不適合責任となります。

まず、契約不適合とは、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」ことを意味しています。「契約の内容に適合しない」ということが要件となる為、契約書の文面がとても大切になってきます。買主が知っていた不備については売主は責任を負わないことを契約書に明記することが必要となってきます。

 

この契約不適合責任の内容としては

 

  • 履行の追完請求権

契約内容と適合していない部分があった場合、修繕・商品の交換を請求できます。

  • 代金減額請求権

原則として契約内容と適合していない部分があり、売主が追完請求に応じない場合、代金の減額請求ができます。

  • 債務不履行の規定による損害賠償

契約内容と適合していない部分があった場合、損害賠償を請求できます。

  • 債務不履行の規定による契約解除

原則として契約内容と適合していない部分があり、売主が追完請求に応じない場合、契約解除が可能です。

 

以上の4点の内容が定められています。

また、瑕疵担保責任では買主が事実を知った時から1年以内に権利行使をしなくてはいけないとされていましたが、契約不適合責任では、買主が「種類又は品質に関して」契約不適合を知った時から1年以内に契約不適合の事実を売主に通知すれば権利が保全されることとなりました。

 

〇新築等の請負工事

この契約不適合責任は建築工事の請負契約に関しても、不具合があった場合、発注者は請負人に対し請求が可能です。

 

内容としては

  • 履行の追完請求権

契約内容と適合していない部分があった場合、修繕を請求できます。

  • 代金減額請求権

原則として契約内容と適合していない部分があり、売主が追完請求に応じない場合、代金の減額請求ができます。

  • 債務不履行の規定による損害賠償

契約内容と適合していない部分があった場合、損害賠償を請求できます。

  • 債務不履行の規定による契約解除

原則として契約内容と適合していない部分があり、売主が追完請求に応じない場合、契約解除が可能です。

この4点が請求可能です。

以上を見てわかるように、契約不適合責任は民法改正前の瑕疵担保責任より買主を保護するものとなっています。

不動産の売買契約を行う際は、以前より条文の重要性が高くなっているため、その点に注意して契約することが必要となります。